市川尚吾の蔵出し

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2017-04-06

[]野澤玲奈とロバート・ミッチャム 13:19

AKB48の野澤玲奈はインドネシアからの帰国子女(JKT48からの移籍メンバー)であり、日本語英語インドネシア語のトリリンガルというのがセールスポイントになっている。エピソードトークの内容が変なことが多くて、聞いているメンバーもファンも頭上に「?」を浮かべるような独特の世界を持っており、それをもって「ノザワールド」と呼ばれているが(けっこう軽視されているが)実は頭が良く、大学受験にも合格して、今春から早稲田大学に通うことになっている。

その野澤玲奈が得意としている指芸があって、下準備としては左手の掌にてんとう虫の絵を、人差し指から小指の中節の甲側に「T・H・I・S」の文字を一字ずつ、右手の掌にてんとう虫が潰れた絵を、水性マジックで描いておく。その状態で以下の四つのフレーズをテンポよく見せる。

(1)左手をグーにして折り曲げた四指を相手に見せて「THIS」、人差し指と中指を伸ばして薬指と小指の文字だけを見せて「IS」、四本とも伸ばしてパーにして掌の虫の絵を見せて「A BUG」と言う。

(2)そのままの状態で「THE BUG」、薬指と小指を曲げて「IS」、小指を伸ばして代わりに中指を曲げて「HI」と言う。

(3)パチパチパチと両手で拍手をする。

(4)左手を下ろして右手の掌を見せ、悲しそうな顔をして「THE BUG IS DEAD」と言う。拍手をしてうっかり虫さんを叩き潰してしまいました、というのがオチなわけ。

記憶だけで書いているので細部が間違っているかもしれないが、大筋では合っているはずである。ポイントは左手の指に書いた「T・H・I・S」の四つの字を指の曲げ伸ばしで「THIS」「IS」「HI」の三つの単語として見せるところ。英語圏で子供に見せるちょっとした遊びとして既存のものなのか、野澤が考案したものなのか、そのへんはよくわからないが、日本国内で広めているのは野澤である(というかまだ広まってはいないのだが)。それはそれとして。

話は変わるが先日「狩人の夜」という古いモノクロ映画をイマジカBSで見た。ストーリーが前半と後半で分離しているので名作になり切れていないカルト作品という印象で、ロバート・ミッチャムが殺人狂の伝道師という役で出ているのだが、左手の人差し指から小指にかけて「H・A・T・E」と、右手は逆に小指から人差し指にかけて「L・O・V・E」と、各指に一字ずつ刺青で入れている。文字が描かれているのは野澤の場合とは違って、指の付け根の節というか、グーパンチで殴るときに打面になる部分。指に刺青って(しかも「HATE」と「LOVE」って)凄いなと、かなり強烈な個性をアピールしている。

その時点でなんとなく野澤玲奈の指芸を連想していたのだが、映画の中でロバート・ミッチャムが合掌をして祈る場面があって、そこで「あっ」と思ったわけですよ。指を組んだことで4字と4字が混ざり合って8字になる。その8字でひとつの単語になってたら凄いぞと。でも左手の親指が上になる組み方で親指側から読んだ場合に「HEAVTOEL」、逆の組み方で親指側から読んだ場合に「EHVAOTLE」で、どちらも意味のある文字列にはならなかった。残念。

だったら自分で作ってやろうと思って考えた。どうせなら右手の親指が上のときと左手の親指が上のときの両方で、それぞれ違った意味のある文字列にしたい、となると英語じゃなくて日本語(ひらがな)のほうが自由が利いて何とかなりそうだ、手を組んだときの文字列がポイントになるなら親指を外す理由はないので左右五指ずつで考えようということで、出来上がったのがこれ。

「どてにれの」「うんないる」

どっちが右手でも左手でもいいんだけど、親指から小指に向かって各指に一字ずつひらがなを書く。五文字の段階で意味のある言葉「LOVE」とか「HATE」とか「THIS」とかになっていないように見えるのが難点なんだけど、

A「昨日土手にジャン・レノがいるのを見たんだ」

B「土手にレノ?」

A「うん。ナイル」

B「しかもナイル川? 待って、ナイル川に土手なんかあったっけ?」

という会話の途中を採用したと思ってほしい(ここがかなり苦しい)。さてこの両手を「ど」を書いた親指が上になるように組んだときに、親指から小指にかけて十文字を読むと「どうてんになれいのる」という文字列が浮かび上がる。たとえばサッカー日本代表の試合で、同点でもW杯出場が決まるのに1点ビハインドで前半が終わってハーフタイムになりました、というようなときに合掌して祈ると「同点になれ祈る」という文字列が組んだ指の中に浮かび上がったら、なかなかいいじゃないですか。ハーフタイムの間に軽食でも摂りたいなと同居人が言い出して、うどんを作ることになったときに、手の組み方を変えると「うどんてなにいれるの」という文字列が浮かび上がる。

というようなことを考えていたのだが、どうだろう。暇人なのはたしかだが、こういうことを考えない暇人も多い中で、こういうことを考える暇人は、人生を有意義に過ごしていると言えないだろうか。

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